【下級裁判所事件:詐欺被告事件/東京地裁刑6/平30・3・23/ 平29刑(わ)2310】

概要(by Bot):
本件は,被告人両名が,共謀の上,本件建設会社がF市から受注した本件業務委託に関し,同市の担当者に対し,内容虚偽の領収書等を証明書類として提出して,労働者宿泊費の支出実績を4160万1644円水増しして申告して,同市の担当者及び決裁権者らを欺罔し,水増し分を含む業務委託料の残額7621万7110円を同社東北支店名義の口座に振込入金させたという詐欺の事案である。本件被害額は多額であり,結果は重大である。もっとも,被告人両名は,自らの経済的利益のために本件犯行に及んだものではないことが認められる。すなわち,本件業務委託の業務委託料は,当初,平成25年8月1日付け除染業務委託契約書により39億4800万円と定められたが,被ばく線量のモニタリングの結果に応じて,一定の基準以上の線量が測定された場所でのみ除染業務を行うことを予定しており,これに伴い最終的な業務委託料の変更が予定されていた。そして,本件業務委託においては,モニタリングの結果,当初の想定より,除染面積等の数量が減少した半面,除染作業を要する土地が点在することに伴う費用増加や,(線量の高い地域と異なり)特別危険手当の支給がないことに伴う労働者確保の困難があったことから,業務委託料は全体としてかなり減額するのに,原価は割高となることが見込まれ,採算割れも懸念された。被告人両名は,そのような状況下で,F市との設計変更協議に関与し,本件建設会社の利益の目減りを防ぎ,一定の利益を確保するように努めていたものであって,そのような活動の一環として,本件犯行に及ん
だことが認められる。詐欺が財産犯であることに鑑み,利欲性の高さに着目すると,欺罔行為者自らが経済的利益を取得する詐欺の典型的な類型と比較すると,本件の利欲性が高いとはいえない。F市の請求に基づき本件建設会社による被害弁償がなされていることを考え併せると,公(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/637/087637_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87637