【下級裁判所事件:覚せい剤取締法違反被告事件/大阪高 1刑/平30・8・30/平30(う)361】結果:破棄自判

裁判所の判断(by Bot):

原判決が捜査手続の適法性について説示する事項のうち本件所持品の不返らは,検討不十分な点がある。まず,原判決は,に関して,管理者の管理権を侵害したとの点で違法としているが,本件にあっては,違法の内実はそれに止まるものではない。原判決も述べるように,本件建物の共用部分は,住人の居住スペースの延長で,住居に準ずる私的領域としての性質を有する空間と解される。管理人が所在する間は,管理人に住人らとの契約に基づく包括的な管理権限があるといえるから,その承諾を得ることで住人の許可なしに本件建物の共用部分に立ち入ることは許容され得るとしても,管理人不在の間に共用部分に立ち入る行為は,管理権侵害にとどまらず,被告人を含む住人のプライバシーを侵害するもので,それ相応の法的根拠がなければ許されないはずである。本件にあっては,警察官らは,まだ裁判所への令状請求にも至っていない時点で本件建物に立ち入っており,その態様も被告人や住人らに断りもなく,大勢で次々に入るというもので,後記のとおり,正当性も認めがたい以上,建造物侵入に問われかねない行為といえる。また,原判決は,被告人に自室のドアを閉めさせなかった行為について,結果的に,被告人を含む本件建物内の住人らの平穏を害したことで,本件建物への立入りに関する違法の程度をより強めるとのみ述べるが,そうした評価はいかにも皮相で,本件においてはそれに止まらない違法があるというべきである。すなわち,ドアの内側は被告人の住居であって,そこは個人のプライバシーが強く保護されなければならない領域であり,居住者が自らの意思によりドアの開閉や施錠を決定すべきことは,その保護の要請からの当然の帰結である。ドアを開けておくよう説得することは,合理的な限度であればもとより許容されるところであるが,本件では,被告人が明確かつ強固に説得を拒む意思(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/980/087980_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87980