【特許権:審決取消請求事件(行政訴訟)/知財高裁/平23・11・30/平23(行ケ)10018】原告:第一三共(株)/被告:特許庁長官

裁判所の判断(by Bot):
上記事実を基礎に,判断する。
ア 刊行物Aとの対比
 訂正発明1については,カルベジロールを虚血性心不全患者に投与することにより,死亡率の危険性が67%減少する旨のデータが示されている。これに対し,刊行物Aには,カルベジロールは虚血性心不全である冠動脈疾患により引き起こされた心不全の患者の症状,運動耐容能,長期左心室機能を改善する点の示唆はあるものの,死亡率改善については何らの記載もない。また,刊行物Aには,カルベジロールを特発性拡張型心筋症により引き起こされた非虚血性心不全患者に対し,少なくとも3か月投与したところ,左心室収縮機能等の改善が認められたことが記載されているが,死亡率の低下について記載はない。
イ その他の公知文献との対比
 本願優先日前,β遮断薬のほかACE阻害薬にも心不全に対する有用性が認められていた,そして,ACE阻害薬及びβ遮断薬の死亡率減少に対する効果に関する報告をみると,①ACE阻害薬であるエナラプリルを駆出率が減少している慢性うっ血性心不全患者(虚血性と非虚血性を含む。)に投与したところ,死亡率のリスクが16%減少したこと,②重度うっ血性心不全(虚血性と非虚血性を含む。)の患者にエナラプリルを投与したところ,試験終了時点(20か月)までで,死亡率が27%減少したこと,③心筋梗塞を発症した左室機能不全患者にACE阻害薬であるカプトプリルを投与したところ,死亡率のリスクが19%減少したこと,④CIBIS試験では,β遮断薬であるビソプロロールを心不全患者(虚血性と非虚血性を含む。)に投与した場合の生存率の改善は実証されていないことが報告されている。
 上記のとおり,本願優先日前,β遮断薬による虚血性心不全患者の死亡率の低下については,統計上有意の差は認められていなかったと解される。また,本願優先日前に報告されていたACE阻害薬の投与によ(以下略)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111201105314.pdf



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