【下級裁判所事件:嘱託殺人被告事件/函館地裁刑事部/平2 6・4・30/平25(わ)145】

概要(by Bot):
本件は,重症うつ病に罹患した被告人が,その精神障害の影響により思考が狭窄した状態に陥り,行動選択の幅が著しく狭まった結果として,自らの行動を制御する能力が著しく減退し,被害者を殺害するという行動選択に至ったものと考えられる。
(3)なお,被告人は重症うつ病に罹患してはいたものの,犯行後速やかに自ら110番通報をするなどしているほか,被告人の通常の知的水準も併せ考えれば,被告人は自らの行為が法的に許されないものであることを理解して行動していたと認められるから,本件犯行当時,被告人の是非弁別能力が失われていなかったことは明らかである。また,被告人の罹患していた重症うつ病は,精神病症状を伴うものではないから,被告人の行動が幻覚や妄想に支配されたものとは認められ
ない上,被告人が本件犯行に及んでいた時間が数分間にとどまることや犯行態様に際だった異常性まではみられないこと等の事情に照らせば,被告人が行動制御能力を完全に喪失してはいなかったことも明らかである。 (4)以上から,本件犯行当時,被告人は,行動制御能力を著しく減退させた心神耗弱の状態であったと認められる。
4弁護人は,是非弁別能力につき,被告人が被害者を殺害する動機が曖昧であること,犯行が合目的性を欠いていること等からすると,本件犯行当時,被告人に是非弁別能力があったとまではいえない旨主張する。また,行動制御能力につき,被告人が手の力が入らなくなるまで被害者の首を締め続けたこと等からすると,本件犯行当時,被告人は行動制御能力を失っていた等と主張する。しかし,本件では,被告人は被害者による殺害依頼があったものと思い込み,被告人なりにその依頼の趣旨に沿って行動しているのであり,そのような被告人の内心の状態を前提とすれば,弁護人の主張はいずれも理由のないものと考えられる。さらに,弁護人は,本件犯行の態様が普段の(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140515141055.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=84187&hanreiKbn=04