【行政事件:国民年金障害基礎年金不支給処分取消等請求 事件/東京地裁/平27・12・11/平24(行ウ)813】分野:行政

判示事項(by裁判所):
障害基礎年金を支給しない旨の厚生労働大臣の決定について,理由の提示がされていない違法があるとして取り消し,これを支給する旨の決定の義務付けの訴えが適法であるとされた事例

線維筋痛症による障害について,国民年金法施行令4条の6,別表2級15号に該当する程度の障害の状態にあると認められないとして,障害等級2級相当の障害基礎年金を支給する旨の決定の義務付けを求める請求が棄却された事例

要旨(by裁判所):線維筋痛症による障害に対して障害基礎年金を支給しない旨の厚生労働大臣の決定について,付記された「障害の状態が国民年金法施行令別表(障害年金1,2級の障害の程度表)に定める程度に該当していないため」との理由では,行政手続法上の審査基準である「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」が適用されたのか否か,適用されたとして同基準第3第1章各節のいずれの認定要領が適用されたのか,適用された認定要領に基づきいかなる当てはめの判断がされたのか等の諸点について明らかにされておらず,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという趣旨を全うしていない,また,不服申立ての便宜上も,審査基準との関係でどのように扱われたのかが問題となるところ,これを申請者が知る手掛かりがないとして,行政手続法8条1項本文の要求する理由の提示を欠く違法があったことを認めて,その決定を取り消し,障害基礎年金を支給する旨の決定の義務付けの訴えが適法であるとされた事例

線維筋痛症による障害について,日常生活動作に一定程度の支障があった様子は見て取れるなどするものの,四肢の関節可動域及び運動筋力の状況を勘案するなどすれば,肢体の機能の障害若しくは体幹・脊柱の機能の障害の観点から又はこれらを総合して,障害等級2級に相当する状態に至っていたとは認め難く,また,平成24年5月1日以降線維筋痛症による障害基礎年金の裁定請求時の整備を求められるようになった重症度分類試案におけるステージ(「自力での生活は困難」)との医師の診断の証明力に関しては,線維筋痛症に特有の疼痛等も総合して加味した場合には,家事動作に相当程度支障が生じ,日常生活が著しく制限を受ける程度に至っていた場面もあったと想定されるものの,診療録の記載と照合すると,障害基礎年金の裁定請求時を含む前後の期間において中長期的に継続して「自力での生活は困難」であったことには疑問を差し挟まざるを得ないとして,これらを総合すると,身体の機能の障害又は長期にわたり安静を必要とする病状において,活動の範囲がおおむね家屋内に限られるほどに,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする状態が長期にわたって存在する常況にあったとまでは認めるに足りないから,裁定請求時において障害等級2級15号に該当する程度の障害の状態にあったとはいえないとの厚生労働大臣の判断に違法はない旨判示して,障害等級2級相当の障害基礎年金を支給する旨の決定の義務付けの請求が棄却された事例

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/893/085893_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=85893