【下級裁判所事件:窃盗/神戸地裁2刑/平28・4・12/平27(わ)97 0】

概要(by Bot):
本件はその執行猶予期間中の再犯である。窃盗行為に対する被告人の常習性の高さが指摘される。もっとも,本件は商品を上着のポケットや脇に隠して店外へ持ち出すという比較的単純な手口の万引き事犯であり,被害額も約800円にとどまり,被害品は還付され,弁償も行われている。その違法性は特別に高いものではない。そして,被告人を診察したB医師は,被告人は前頭側頭型認知症を患い,その症状のひとつとして衝動を抑制しづらい状態にあり,本件犯行はその影響を受けていると証言している。同医師は,医学的検査の結果や被告人の行動傾向の分析など複数の根拠を示して説明しており,その意見は信頼できるものである。検察官は,診断の前提となる事実関係が適切に把握されておらず,標準的な診断基準に則った診断がなされていないなどと主張するが,同医師の証言内容を検討しても,事件記録や面談などの資料収集に関しても,専門的な知見に基づく診断に関しても,その意見の信頼性を失わせるような誤りがあるとすべき根拠は見当たらない。検察官は,被告人が周囲を確認してから商品を隠匿し,退店の際に周囲を何度も確認している事実を指摘し,その行動は病的なものではないと主張する。しかし,B医師の証言によれば,前頭側頭型認知症を患って衝動を抑制しづらい状態にあっても,通常は万引きが悪いことだとは理解しているというのであるから,被告人がそのような行動をしていることから直ちに同医師の診断が不合理であるとまではいえない。むしろ,上記のように手口が比較的単純でやや稚拙である点を,罰則があっても報酬に対する衝動を抑制しづらい状態にあったことの表れと見ることも可能と解される。以上によれば,被告人の認知症の症状が本件犯行に一定の影響を及ぼしている 3ことは否定できず,被告人が本件犯行に及んだことに対する非難は,ある程度限定されるというべきである。そ(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/931/085931_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85931