判示事項(by裁判所):
厚生年金保険法上の被保険者であった者と別居中であった配偶者に対してした遺族厚生年金の不支給処分が違法とされた事例
要旨(by裁判所):厚生年金保険法上の被保険者であった夫による悪意の遺棄により同人と別居中であった妻に対してした遺族厚生年金の不支給処分につき,厚生労働省年金局通知が定める「生計同一に関する認定要件」を満たさない場合であっても,次の(1)及び(2)などの判示の事情の下では,被保険者であった者により生計を維持していたもの(厚生年金保険法59条1項)と認めるのが相当であるとして,前記不支給処分を違法とした事例。
(1)妻が直ちに離婚する意思を確定的に有していたとは認められないこと,他方,夫が離婚訴訟を提起したとしても,別居が夫の一方的な悪意の遺棄によりもたらされ,別居期間も短いなど,その離婚請求が認められるとは考え難い状況にあることなどからすると,両者の夫婦関係は,離婚しているのと同視すべき段階に至っていたとはいえない。
(2)夫は,別居後,妻に生活費を渡していなかったが,妻は,専業主婦であり,独自の収入はなく,夫が残置していった現金や自宅等の夫婦共有財産に依存して生計を維持しており,これらの夫婦共有財産に依存することなくその生計を維持することは不可能であった。
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/056/086056_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=86056