判示事項(by裁判所):
1土地区画整理事業の施行者が,事業計画の決定後に,高規格堤防の整備事業と共同して実施する旨の協定を河川管理者との間で締結した場合において,上記事業計画の定める設計の概要を変更する手続を経ずにされた仮換地の指定が違法なものとはいえないとされた事例
2高規格堤防の整備事業と共同して実施することとされた土地区画整理事業における仮換地の指定が,行政権を濫用した違法なものとはいえないとされた事例
要旨(by裁判所):1土地区画整理事業の施行者が,事業計画の決定後に,高規格堤防の整備事業と共同して実施する旨の協定を河川管理者との間で締結した場合において,上記事業計画の定める設計の概要を変更する手続を経ずにされた仮換地の指定は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,違法なものとはいえない。
(1)上記仮換地の指定が土地区画整理事業に係る工事のため必要があるとしてされたものであった。
(2)上記協定の締結によっても,土地区画整理事業における盛土造成工事のため必要があるという要件に欠けるところがない。
(3)上記協定の締結により,仮換地の具体的内容(位置や地積)を変更する必要が生じていない。
2高規格堤防の整備事業と共同して実施することとされた土地区画整理事業における仮換地の指定は,高規格堤防の完成後に施行地区内の宅地が高規格堤防特別区域に指定されて河川法上の制約を受けるという,土地区画整理事業自体がもたらす本来的な権利の変動を超える権利の制約を可能にするものであるとしても,次の(1)〜(5)など判示の事情の下では,行政権を濫用した違法なものとはいえない。
(1)上記高規格堤防の整備事業を実施する河川管理者が,土地区画整理法100条の2に基づく管理として,土地区画整理事業の施行者との関係において,上記共同実施に係る工事を行う権原を有していた。
(2)一般に,公共施設(河川)である堤防の整備を土地区画整理事業として行うことは不可能ではない。
(3)上記土地区画整理事業が,都市計画法13条1項柱書により,上記高規格堤防の整備を行うことを定めた河川整備計画に適合するように行われるべきものであった。
(4)上記土地区画整理事業の施行地区について市街地としての改善の必要性が認められ,上記仮換地の指定の前提となる事業計画自体には瑕疵がなかった。
(5)高規格堤防特別区域内の土地に対する権利の制約の程度が一般の河川区域内の土地に比べて低いなど,上記河川法上の制約が必ずしも重大なものとはいえない。
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/392/086392_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=86392