【下級裁判所事件:損害賠償請求事件/京都地裁7民/平30・3 ・15/平25(ワ)3053】結果:その他

事案の概要(by Bot):
以下,略語又は説明の必要な用語を使用する場合の各略語又は各用語の意味は,別紙略語・用語一覧表記載のとおりである。ただし,初出の場合など,理解のため併せて正式名称を用いる場合がある。
第1 本件は,平成23年3月11日,被告東電が設置し運営する福島第一原子力発電所(福島第一原発)1〜4号機において,東北地方太平洋沖地震(本件地震)及びこれに伴う津波(本件津波)の影響で,放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生したことにより,原告らがそれぞれ本件事故当時の居住地(本件事故後出生した者については,その親の居住地。以下同じ。)で生活を送ることが困難となったため,避難を余儀なくされ,避難費用等の損害が生じたとともに,精神的苦痛も被ったと主張して,原告らが,被告東電に対しては,民法709条及び原賠法3条1項に基づき,被告国に対しては,国賠法1条1項に基づき,それぞれ損害賠償を求める事案である。
第2 原告らは,被告東電に対して,本件事故に関し,被告東電に過失があったと主張しており,被告東電の過失は,原賠法によっても排除されない民法709条の不法行為責任の要件であるとともに,慰謝料の増額事由に当たるものと位置づけている。その過失の内容は次のとおりである。すなわち,被告東電は,平成14年頃,遅くとも平成20年3月頃の時点においては,大規模地震や津波の最新の知見を得ており,地震や津波による原発事故の発生を予見し,又はその予見が可能であったにも関わらず,地震及び津波対策を怠ったこと,平成14年頃までには,大規模災害等による全電源喪失事故の発生を予見すべきであったにもかかわらず,これを怠り,シビアアクシデント(SA,過酷事故)への対策を行う義務を怠ったことであり,これら義務違反により,本件事故は発生した。
 また,被告国に対しては,原告らは,公権力の行使に当たる公務員である経済産業大臣に,権限不行使の違法な行為があったと主張している。その違法行為の内容は,次のとおりである。すなわち,被告国は,平成14年の時点,遅くとも平成20年3〜6月頃までの間に,地震又は津波による原発事故の発生を予見可能であり,それを踏まえれば,福島第一原発は安全性が欠如した状態であったのであるから,電気事業法40条に基づき技術基準適合命令を発し,又は炉規法に基づいて一時的に運転停止させる等の対策をとるべきであったにも関わらず,同原発の不適合状態を放置して規制権限を行使しなかったこと,上記の頃までには,大規模災害等による全電源喪失事故の発生を予見可能であったのであるから,電気事業法に基づく省令制定権限を適切に行使して,事業者である被告東電に対し,SA対策を行うよう義務付けをすべきであったにもかかわらず,その制定を怠って規制権限を行使しなかったこと,又は電気事業法に基づく行政指導権限を適切に行使して,電源対策の整備等を行うよう指導すべきであったにも関わらず,これを行使しなかったことであり,これら違法行為により,本件事故は発生した。

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/067/088067_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88067