【下級裁判所事件:殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被 告事件/大津地裁/平31・2・8/平30(わ)235】

概要(by Bot):
本件は,当時19歳とはいえ現職の警察官であった被告人が,勤務中に携帯するけん銃を凶器に用い,上司に当たる同僚警察官との関係で募らせていた悪感情を晴らすべく,けん銃発射の方法で殺害に及び,即死させた内容を含む空前の,絶後となるべき重大な事案である。 2よって慎重に検討した結果,以下のとおりの評価に至った。
?けん銃関連の殺人罪の量刑傾向は,社会秩序を根本的に覆す意味合いを有する反社会的組織の活動に属する事案が主にその傾向の基礎となっているところ,本件をこれらと同視することはできない。むしろ,職場の同僚との人間関係のもつれから殺害に及んだ類型に準じる位置付けとしつつ,非難を強めるべき特有の観点の有無を思案したところ,公の信託を受けて例外的にけん銃の携帯を許されている警察官が信託に背き,社会を揺るがせる不正なけん銃の使用や所持に及んだ要素が見過ごせないから,ひとつ重い部類の位置付けとして意識することとした。
?その上で順に検討すると,量刑の中心を占めるけん銃発射及び殺人の犯行は,殺傷能力の高い凶器の性状はもとより,判示のとおりの態様で2発もの弾丸を至近距離で撃ち込むという危険で悪質な犯情を備えている。突発的で計画性はないものの,強い殺害の意欲に基づく犯行であって,この点の評価は当然に厳しい。
?次に,犯行の経緯の評価を述べると,被告人は,現場勤務に就いてからさほど期間を経ていない新人の警察官であった。被告人を含む新人警察官の指導,養成は,警察学校でも十分な教育を尽くすに至らず,残りを現場の指導担当者に委ねるものの,その個性や余力に依存するところが大きく,新人の特性との組み合わせ次第により達成度に差を生じかねないものであったとうかがわれる。その未熟な警察官がけん銃を携帯していることを踏まえると,組織の指導,養成の在り方が検討されるべきであったと考えられる。結果として,(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/517/088517_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88517