裁判所の判断(by Bot):
本件再審公判で取り調べた証拠によれば,被害者は,昭和60年1月6日頃,熊本県下益城郡松橋町所在の同人方において,左総頸動脈の切損により失血死しており,その顔面,頸部等に認められた複数箇所の創傷状況から,被害者は,何者かに
よって刃物様の凶器を使用して殺害されたものと認められる。しかし,被告人が被害者殺害の犯人であることを示す証拠はなく,被告人が被害者を殺害したとは認められない。なお,検察官は,被告人の自白を含めて,確定審で取調べ済みの証拠及び再審請求審で提出された証拠のうち,検察官が請求した証拠を中心として数多くの証拠を本件再審公判でも証拠請求した。しかし,本件再審公判における検察官請求証拠のうち,被告人の自白については,再審請求審における数年にわたる審理の中で,確定審が認めた自白の任意性,信用性の弾劾を目的とする詳細な弁護人の主張を踏まえ,前記Cの証人尋問を含む多くの事実取調べの結果,自白の重要部分に客観的事実との矛盾があるとの疑義が生じたことなどから,その信用性が否定されたのである。そして,本件再審公判に際し,検察官は,被告人の自白を含む確定審及び再審請求審において取り調べられた多くの証拠を請求する一方で,再審請求審における裁判所の上記判断が確定したことや,その手続における一連の経緯,本件の証拠構造等を踏まえ,本件につき被告人が有罪である旨の新たな主張・立証は行わない旨を宣明したのである(なお,検察官は,確定審で取調べ済みの証拠及び再審請求審で提出された証拠に基づいて,適切な判断を求めるとしながら,再審請求審で提出された証拠の中でも最も重要性の高い証拠の一つである,犯行に使用した後で燃やしたとされる前記布きれなどは請求していない。)。すでに述べた本件再審公判に至った経緯等を十分に念頭に置くなら,仮に,被告人の自白を,他の確定審で取調べ済み(以下略)
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/645/088645_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88645