【下級裁判所事件:殺人/東京高裁8刑/平31・4・24/平30(う)18 82】結果:破棄自判

裁判所の判断(by Bot):

原判決の認定理由のうち?,?については,関係証拠に照らして不合理な点はなく,是認できるが,原判決は,被告人の精神障害の本件犯行への影響の程度や,被告人の行動制御能力の判断に当たって,考慮すべき要素を看過ないし軽視するなどして,論理則,経験則等に反した不合理な判断をしており,是認することができない。以下,説明する。 ?被告人の精神障害の本件犯行への影響
ア原判決も判示しているように,被告人の幻聴は,被告人に被害者の殺害を命じたという点で,直接的であり,また,被告人にはその幻聴以外に本件犯行に及ぶ動機は全くなかったことが認められる。そもそも被告人は,被害者がアパートの被告人の居室の隣室の父子家庭を訪れているヘルパーであるという認識であったが,実際には,被害者は隣室の父親の母親であり,被告人は会ったこともなく,ベランダ越しに二,三回声を聞くことがあった程度にすぎなかった。以上の点のみからも,被告人の精神障害の本件犯行への影響は,著しいものであったといえる。ここまでは,原判決も認めていると解される。 イしかし,被告人の精神障害の本件犯行への影響の程度を判断する上では,更に,以下の点も考慮する必要がある。
(ア)被告人の妄想・幻聴が被告人にとって元々非常に強い支配力を持ったもので
あること関係証拠によれば,被告人には,昭和62年頃から,自分の頭の中に年配の男性がいて,その男性から色々な命令を受けるという妄想・幻聴の症状が現れるようになり,被告人はその声の主を「御主人様」と呼んでいたが,本件時の幻聴も同じ声によるものであったこと(このように,当該幻聴は妄想を伴うものであるが,以下,これを単に「幻聴」,「幻聴の声」ともいう。),被告人は,幻聴の声に命じられて,自殺の動機がないのに,昭和63年と平成元年に,2度にわたり自殺未遂をしており,?昭和63年時には,幻聴(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/721/088721_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88721