【下級裁判所事件:出入国管理及び難民認定法違反幇助/ 京高裁5刑/令元・7・12/平30(う)2076】結果:破棄自判

裁判所の判断(by Bot):

原判決の前提事実に関する認定(前記2)は,当裁判所も支持できるが,その事実関係の下で,被告人について,不法残留幇助罪の成立を認めた判断は是認することができない。弁護人の控訴趣意及び検察官の答弁を踏まえ,以下,当裁判所が,そのよ
うに判断する理由を説明する。被告人が本件行為に至る経緯やその実態をみると,Aが不法残留となる約9か月前から,被告人とAは,同居し,生計を共にしていたものであるところ,Aは資産を有しており,被告人が離職した際の家賃等をAが負担していたことからも認められるように,被告人によって一方的に扶養されるという関係にはなかった。また,Aが不法残留となった後に二人が転居し,飲食店経営を始めたという事情はあるものの,転居によって,以前から継続していた同居の性質が変容したとはいえず,飲食店経営はA及び被告人の生計の手段として行われていたものであるから,本件行為は,Aと内縁関係にある被告人が,同居して生計を共にする従来からの状態を継続していたものにすぎないと評価することができる。他方で,被告人は,一定の場所に居住し,公然とAと共に飲食店を切り盛りし,ブログにAとの内縁関係を前提とする記事を載せ,家族や知人に紹介するなど,Aの存在を殊更隠そうとしていたような状況は認められないし,公務所に虚偽の文書を提出するなどして当局に不法残留の発覚を妨害するなどしたことも認められない。他方,正犯であるAの不法残留は,在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留した,という不作為犯であるから,前記の本件行為が,Aの正犯行為を促進する危険性を備えたものと評価することは困難というべきである。そうすると,原判決が,被告人につき,Aの不法残留に対する幇助罪の成立を認めたのは,正犯行為の性質を的確に踏まえないまま,幇助行為の要件を形(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/896/088896_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=88896