裁判所の判断(by Bot):
(1)犯人と被告人の同一性について
原判決は,犯人と被告人とが「おそらく同一人であると考えられる」と結論付けるB鑑定に高い信用性を認め,同鑑定のみに依拠して,犯人が被告人であると強く推認できるとしているところ(前記1(2)ア),この原判決の判断は是認することができない。その理由は,以下のとおりである。 アはじめに
本件においては,画像等による顔貌の異同識別をした顔貌鑑定の信用性が問題とされている(なお,原判決も「B及びCの各鑑定が信用できるか否かが重要となる」としているが,後記のとおり,重要となるのは各鑑定の証明力の程度である。原判決が,このような意味で顔貌鑑定の信用性を問題としているのかは必ずしも明確ではない。)。一般に,画像等による顔貌の異同識別は,鑑定資料となる画像に撮影されている人物の状況,撮影現場の明暗等を含めた撮影条件,撮影された画質の程度等に様々なものがあるなかで行われると考えられ,また,異同識別の根拠となる個々の顔貌の特徴の固有性の程度等にも様々なものがあると考えられる。このように様々な鑑定資料等を用いて行われている顔貌鑑定による個人の識別については,その前提となる鑑定資料の内容等に応じて,その証明力(識別力)の程度にかなりの幅が生じるものと考えられる。そうすると,顔貌鑑定については,鑑定の手法や分析過程等の合理性の検討を行うことは当然ではあるが,手法等に合理性があるというだけで顔貌鑑定に証明力(識別力)があるなどと速断することはできず,鑑定資料等がどのようなものであるかを具体的に踏まえた上で,特徴の一致等についての具体的な指摘内容を検討し,証明力(識別力)の程度についての分析,検討及び評価を慎重に行うことが必要かつ重要であると考えられる。顔貌鑑定の評価に当たっては,DNA型鑑定や指紋による個人の識別に対する評価とは相当に異なる(以下略)
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/060/089060_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89060