【下級裁判所事件:殺人被告事件/名古屋高裁刑1/令元・11 27/令1(う)293】結果:棄却

裁判所の判断(by Bot):

傷の位置,形状,深さから,被告人の意図しなかった結果によるものである可能性や,被害者の意思による結果の可能性を否定し,犯行前,被告人が被害者の態度に苛立ちを募らせていたという経緯や犯行後に自分が刺したと周囲に述べたことを踏まえ,被告人が被害者の胸部を突き刺したこと,それが殺意によるものであったことを認めた原判決の判断過程は,論理則・経験則等に照らし正当である。原判決に事実の誤認はない。 所論の検討
ア所論は,切り込まれたのは肋軟骨であるのに,切り込まれたのはより硬い胸骨であるとし,胸骨を切り込むほどの強い力で刺したことを殺害行為の存在及び殺意の有無を推認するための間接事実の一つとした原判決を論難する。この点,原審では切り込まれたのが胸骨か肋軟骨かについて医師二名による証人尋問が行われているところ,切り込まれた場所が胸骨か肋軟骨かの違いは,そこに加えられた力の大きさの違いを推し測る事情とはなり得るものの,その余の諸事情から,刺したのは被告人であり殺意も優に認められる本件事案においては,有意性のある争点とはいい難い。所論は採用の限りでない。
イ所論は,被害者の血の飛沫状況,本件包丁が落ちていた場所,リビングのカーペットのずれなどに照らすと,被告人と被害者が激しく動き,当初の位置から窓の方へ移動し,揉み合う形になり,その際,被害者が前方に倒れ込んで本件包丁が刺さった可能性があるという。しかし,犯行現場の写真を見ても,カーペットのずれはわずかで,揉み合いを推定するのは困難である。血の飛沫状況については,刺された被害者がその後動いて付着した可能性も考えられる。本件包丁が落ちていた場所も含め,結局,所論がいう可能性はいずれも抽象的な可能性に過ぎないといわざるを得ない。所論は理由がない。 ウその他所論は種々主張するが,いずれも理由がない。事実誤認の論旨は理由が(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/115/089115_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89115