結論(by Bot):
以上のとおり,本件では刑法230条の2第1項を適用することはできず,被告人には名誉毀損罪が成立する。
【量刑の理由】
本件は,被告人が,F学校の跡地に隣接する公園において,同朝鮮学校の元校長が拉致事件に関与して国際指名手配されているという事実を摘示し,同朝鮮学校の経営主体である本件学校法人の名誉を毀損したという事案である。
人を拉致した容疑で国際指名手配されているという事実の摘示は,本件学校法人の名誉を大きく害する上,その事実摘示に当たり,拡声器を用いたり,その際の動画をインターネットを用いて公開するという伝播性の高い方法がとられたことからすると,本件犯行態様及び被害結果はいずれも軽視できるものではない。もっとも,前記のとおり被告人は,日本人拉致という公共性の高い事柄について,公益を図る目的で,それまでに得てきた情報等を踏まえ,自己の主張を述べる中で,名誉毀損に当たる表現行為に及んだもので,この点は相応に考慮すべき事情といえる。なお,被告人には本件学校法人及びF学校に対する侮辱,同校に対する威力業務妨害等で服役した前科が2犯あり,最終刑の執行が終了してから1年経たないうちに本件に及んだものであるが,本件は,政治団体に所属する被告人が,既に存在しない同校が隣接していた本件公園で,その主張を述べる中で本件学校法人の名誉を害する行為に及んだもので,本件学校法人が運営する学校の業務を直接的に妨害した前記の前科とは犯行態様が大きく異なるから,本件の量刑に当たって前記の前科を過度に重視することは相当ではない。以上によれば,被告人の刑事責任は,懲役刑を選択すべき程度に重いものとはいえず,罰金刑を選択するのが相当である。よって,主文のとおり判決する。
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/195/089195_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89195