裁判所の判断(by Bot):
責任能力の有無・程度は,被告人の精神障害の状態という生物学的基礎の上に,事理弁識能力及び行動制御能力がどの程度障害されていたか,逆にいえば,どの程度正常なまま残っていたかを,法的に判断するものである。これまでの検討の結果,被告人は,妄想性障害という精神障害が重篤化し,強い妄想の影響により,本件犯行を行ったものといえる。しかし,そのことから直ちに,責任能力が失われていたとか,著しく制限されていたということにはならない。これまでに明らかにされた精神医学的な判断を基礎として,心理学的要素について検討を加え,法的に責任能力の判定を下す必要がある。精神障害の種類(診断名)の問題ア診断名が判定されれば,責任能力判断が一義的あるいは,ほぼ確実に決まるわけではない。むしろ行為時の具体的な精神症状のあり様が問題であるから,診断名が決定的に重要であるとはいえない。しかし,本件では,妄想性障害に基づく精神症状が問題となるから,やはりこの点の検討が必要となる。なぜなら,妄想性障害は,その妄想の局面を除けば,通常の社会生活を送れる場合が多い(本件の被告人もそうであった。)上,その妄想も,基盤には行為者自身の人格があり,妄想自体も奇異なものではないなど,行為者の人格特性から説明が付き,その結果,妄想に基づく行為であっても完全責任能力と判断されることが多いとされているからである。当裁判所も,そのような判断がなされている例をもちろん承知しているが,やはり,これも具体的な妄想のあり様によって判断すべきであると考える。イ当審鑑定人も,妄想性障害については,生来の人格と精神障害とが不可分的に結びついているということは認めているが,しかし,そのような点を踏まえても,本件は,被告人のもともとの人格という面だけでは到底説明が付かないと思われる。妄想の内容は,前述のとおり,精神(以下略)
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/228/089228_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89228