【下級裁判所事件:強盗殺人被告事件/名古屋高裁刑1/令2 1・9/平31(う)141】結果:破棄差戻

裁判所の判断(by Bot):

1検察官の論旨は,強盗殺人罪の成立を否定し,殺人罪と窃盗罪を認定するにとどめた原判決には事実の誤認があるという。
2当裁判所も,強盗目的を認めず殺人罪と窃盗罪を認定した原判決には事実の誤認があると判断した。その理由は以下のとおりである。証拠によれば,原審検察官が主張する前記事情の自動車内を物色した目的が,金品を探すつもりであったか逃走するために車のキーを探すつもりであったかについて争いはあるものの,どちらにしても財物を物色したことに変わりはないから,いずれの事情も認められる。そうすると,被告人の弁解を一旦考慮の外に置いた場合,前記事情を総合考慮すれば,被告人に強盗目的があったことが優
4に推認できる。原判決も,被告人が被害者らを殺害後,被害者宅内を物色し,現金が入った財布を持ち去った事実を踏まえて,このことが被告人に当初から強盗目的があったことをうかがわせる事情であるとしながら,他方,被告人に強盗目的があったのであれば,被告人の経済状況からしてより広範囲を物色するのが自然であるが,被告人はトートバッグを物色したのみで,持ち去ったのも財布だけであったことからすると,被害者殺害後に金品窃取を思い立った可能性は否定できないとした(骨子)。しかしながら,強盗目的があっても現場の状況や発覚の可能性の程度などから物色できる範囲が主観的にも客観的にも限定されてしまうことがあり得ることは容易に想定できる。したがって,物色した範囲が広範囲に及んでいるかそうでないかという事情を強盗目的の有無を推論するための事情としてみることに合理性があるとはいい難い。もっとも,原判決が,被告人の経済状況からして,とも説示していることから推察すると,原判決の主旨は,被告人の物色した範囲が広範囲に及んでいなかったのは,被告人の金銭欲がその程度のものであり,そのような被告人に当初から強(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/243/089243_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89243