【下級裁判所事件:傷害被告事件/大阪高裁5刑/令2・2・6/ 30(う)387】結果:破棄自判

裁判所の判断(by Bot):

1争点に係る事実認定の特徴と,これを踏まえた判断の結論
?関係証拠によれば,検察官主張のびまん性軸索損傷は,MRI画像診断や病理解剖によりその存在等をとらえられるものであるが,本件ではいずれの資料も得られていないため,存在等が明確になっておらず,これを認定するには,ほかの手掛かりから推認を働かせるほかない。
?また,急性硬膜下血腫は,CT画像診断によりその存在及び血腫量等をとらえられるものであり,本件でも関連の情報が得られているが,開頭手術等が行われていないために詳細は判明せず,特に,出血源が架橋静脈の剪断であるか否かの点を含め,これらを認定するには,推認を働かせるほかない。
?検察官の立証は,びまん性軸索損傷及び架橋静脈の同時多発的な剪断の存在をそれぞれ推認させようとし,それらの存在により,回転性外力が頭部に加わったこと,すなわち,被害児に対する揺さぶり行為の存在を推認させようとし,その揺さぶり行為をなし得たのは被告人以外に考えられないとして,有罪の推認を導こうとするものである。
?以上のとおり推認を重ねる手法は,家庭内で乳幼児に重い傷害の結果が生じた本件のような事案の端緒において,関係機関が虐待の可能性を想定して対処を検討する場面でもとられると考えられるが,その事案につき刑事訴追がなされ,有罪無罪を見極める刑事裁判に至った場合,判断者は,推認に推認を重ねていくという誤りが介在しやすい構造の事実認定を迫られていることに鑑み,推認を妨げる事情に特に注意を払い,そのような事情を想定することが不合理であるとして排斥できるかどうかを慎重に検討する必要がある。
?また,推認の過程で専門家たる医師の見解が重要な証拠資料となる本件においては,特に,有罪の推認を妨げる事情について,これを否定する医師の見解に対し,否定の根拠に疑問が残らないかよく吟味する必要があり(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/263/089263_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89263