【下級裁判所事件:傷害/福岡地裁小倉支2刑/令2・2・4/令1( わ)593】

概要(by Bot):
本件は,H傘下の暴力団組長であった被告人が,ほかの組長や組員らと共謀の上,飲食店を統括していた被害者に対し,同店が暴力団立入禁止標章を掲示したことを理由に,アイスピック様のものでその左大腿部を刺して傷害を負わせた事案である。同標章を掲示した店舗関係者に危害を加えて標章掲示をやめさせるとともに,Hに対する恐怖心をあおるために行われた犯行であり,その反社会的な動機は強く非難されなければならない。犯行態様をみると,被害者の行動を確認し,下見をして犯行計画を立て,実行犯のほか,被害者が退店したことの連絡,実行犯の送迎,証拠品の処分等,それぞれが役割を分担して手際よく行われている。組織性,計画性は顕著であり,かなり悪質である。被害者の傷害自体も刺創であって軽微とはいえない上,被害者は恐怖を感じて引越しを余儀なくされるなど,その精神的苦痛には大きなものがある。また,本件は,Hが一般市民を標的とした犯行であって,厳正な対応が求められる。被告人は,ほかの暴力団組長にも協力を求め,それぞれが配下の組員に指示をして本件犯行に及んでおり,主犯としての責任を免れない。また,暴力団関係の事件で長期の服役を経験しながら本件に至っていることも看過しがたい。以上によると,被告人の刑事責任は重い。そうすると,真相解明に貢献しているわけではないが,当公判廷に至ってようやく事実そのものは認めるに至ったこと,前述したように本件は社会的な影響を与えることを意図して行われた犯行であり,一定の限度はあるものの,被害者との間では82万円を支払って示談が成立し,被害者の処罰感情もある程度和らいでいること,遅きに失した感は否めないが,当公判廷において暴力団を脱退し正業に就く旨供述し,仕事を確保して保釈中に仕事を始めたことなど,被告人のために酌むことのできる事情を十分に考慮しても,主文の刑はやむを(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/454/089454_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89454