要旨(by裁判所):
民間企業が自社製品の開発研究に関しその分野を専門とする国立大学教授と個人契約を結んで技術指導を仰ぎ対価(技術指導料)を支払うのと並行して,開発研究に関連する実験が大学との共同研究として実施され,個人契約に基づく技術指導も研究期間中は実験の計画策定や準備・実行等が主であったという事実関係において,大学教授がその職務として学生らのために指導する実験により民間企業もまた企業目的に資する有益なデータを得ていたことなどから,技術指導料は大学教授の職務である実験に関する指導に対する対価を含むなどとしてこれに賄賂性を認め,技術指導料の支払を決裁するなどした民間企業の役員らに贈賄罪の成立を認めた原判決に対し,控訴審判決は,大学教授の実験に関する指導には,大学教授の職務である学生らに対する指導と個人契約に基づく民間企業に対する私的な指導とが併存していたとみるのが自然であるとして,技術指導料と職務との対価関係に疑問を呈するとともに,仮にいわゆる職務密接関連行為の理論によるなどしてその対価性が認められるとしても,大学教授をはじめとする研究職公務員の職務の特殊性に鑑みれば,実体のある職務外活動に関し適法な趣旨で供与された金員についてそのような対価関係のみで直ちに賄賂すなわち不正な報酬と認めるのは相当ではなく,賄賂であることを認定するには報酬の不正さを基礎付ける事情が対価性とは別に認められることが必要であると解されるとした上で,本件においてそのような事情は見当たらないとし,技術指導料の賄賂性を否定して,被告人らを無罪とした。
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/565/089565_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89565