裁判所の判断(by Bot):
原判決は,本件ドーナツが喉頭ないし気管内を閉塞したため窒息が生じ,被害者はこの窒息により心肺停止状態に陥り,これに起因する低酸素脳症等により死亡したとの機序を認定した上で,被告人には業務上過失致死罪における過失が認められるとしたが,原判決が原判示の過失を認めたことは是認できない。以下,その理由を説明する。 原判決の問題点
ア原判決は,結果の予見可能性を検討し,その上で注意義務を検討するという判断枠組みに基づき,予備的訴因に沿う過失を肯定しているところ,原判決は予見可能性を適切に捉えていない。すなわち,原判決が検討した予見可能性の内容は,被害者自身に対する窒息の危険性を抽象化し,「本件施設の利用者に間食の形態を誤って提供した場合,特にゼリー系の間食を配膳することとされている利用者に常菜系の間食を提供した場合,誤嚥,窒息等により,利用者に死亡の結果が生じること」とされている。これは,本件施設の利用者の状況は様々で,各利用者の間食の形態が常に誤嚥,窒息の防止だけを目的として決められているわけではないのに,特別養護老人ホームにおける利用者一般という概括的な存在を対象に,常菜の中でも,どのような種類の間食かを特定しないまま,死因についても誤嚥,窒息の例示はあるが「等(この点について,検察官は,人の生理的機能に障害を与えること,又は健康状態を不良に変更すること一般と釈明する。原判決5頁)」を付して包括性の高いものにした上で,利用者が死亡することについての予見可能性を問題にしたものであり,要するに,特別養護老人ホームには身体機能等にどのようなリスクを抱えた利用者がいるか分からないから,ゼリー系の指示に反して常菜系の間食を提供すれば,利用者の死亡という結果が起きる可能性があるというところにまで予見可能性を広げたものというほかない。しかし,具(以下略)
(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/653/089653_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89653