【下級裁判所事件:傷害/大阪地裁6刑/令2・12・4/平29(わ)486 9】

概要(by Bot):
本件は,子供の頭部に単に急性硬膜下血腫が存在する事案ではないのであって,既に慢性硬膜下血腫が存在し,かつ,これが急性硬膜下血腫と隣接している部分がある事案であることを直視したとき,急性硬膜下血腫が公訴事実記載の暴行に至らない外力によって生じたのではないかとの疑問が払拭できない。その外力として証拠上想定されるものとしては,例えば,弁護人が主張する,被告人が,6月26日及び翌27日,Aにつき抱っこひもを用い,自転車に乗って託児所に送迎したことにより生じた外力であっても,首の据わらない子供に対し体調を損なうおそれがあるとされている縦抱きの状態で,抱っこひもに付属していたヘッドサポートを使用していなかったというのであるから,その現実的な可能性を打ち消すほどの理由は見いだし難い。外力が小さいものであった可能性は,E医師が,Aには外傷が強い場合に出てくる脳浮腫が認められず,急性硬膜下血腫も軽度のものであった旨証言することと整合し,また,F医師も,Aには脳実質損傷も脳浮腫も認められないが,激しい暴力的な揺さぶりが加えられた場合には,即時に意識障害が認められるものである旨証言するところ,被告人がAを託児所に預けた時点では,Aに意識障害等は認められず,その約50分後に異変が生じたこととも整合する。(5)検察官の主張に沿って,急性硬膜下血腫の存在から,身体を揺さぶるなどの方法により頭部に衝撃を与える暴行が加えられたと直ちに認定することには,疑問があるといわざるを得ない。検察官の主張は,D医師,E医師及びF医師の証言がほぼ同内容であることを前提に,Aの頭部の受傷状況について争いはないとした上で論理を組み立てるもので,いささか粗いきらいがある。4(1)検察官は,被害児に病気がなく,事故で頭部に致死的な外力が加わった場合でなければ,頭部が激しく揺れる状態になったこと(揺さぶ(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/919/089919_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89919