【下級裁判所事件:保全異議申立事件/広島高裁4/令3・3・1 8/令2(ウ)4】結果:その他(原審結果:却下)

要旨(by裁判所):
発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)の周辺に住む債権者らが,人格権に基づいて本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,本件原子炉の運転の差止めを命じた抗告審決定を取り消し,債権者らの抗告を棄却した事例。
1現在の科学的知見からして,本件原子炉の運転期間中にその安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する可能性が具体的に高く,これによって債権者らの生命,身体又は健康が侵害される具体的危険があると認められなければ,本件原子炉の運転差止めを命じることはできない。この疎明責任は債権者らが負うべきであり,福島事故による影響の甚大性等を考慮しても,独自の科学的知見を有しない裁判所において,本件原子炉の存在及び債権者らの居住状況から直ちに債権者らの生命等が侵害される具体的危険があると事実上推認するなどということは相当でない。
2債務者が行った海上音波探査の結果,本件発電所敷地の2km以内に活断層はないとした債務者の評価に不合理な点があるとは認められない。また,債権者らが指摘するSPGAモデル及び「不均質モデル」を,将来発生する地震動の予測に用いることの当否は明らかでなく,債務者による基準地震動の算定が不合理であるとは認められない。
3阿蘇が本件原子炉の運転期間中その安全性に影響を及ぼすような規模の噴火を引き起こす具体的危険の有無については,専門家の間でもそれぞれの分析結果等に基づいて意見が分かれている。このような現在の科学的知見からして,阿蘇が上記のような噴火を引き起こす可能性が具体的に高いと認めることはできない。
4債権者らのその余の主張を検討しても,上記具体的危険が疎明されたとは認められない。

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/237/090237_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=90237