【下級裁判所事件:文化財保護法違反,道路交通法違反, 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件/奈良地裁/令3・5・26/令3( わ)92】

概要(by Bot):
本件は,1天然記念物である「奈良のシカ」(以下単に「シカ」という。)1頭を斧様のものを用いて死に至らしめたという文化財保護法違反の事案,2酒気帯び運転をしたという道路交通法違反の事案,3刀1振を所持したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。1文化財保護法違反の事案についてみると,奈良公園内に生息する野生動物であるシカが被告人の自動車に頭突きをしたことに腹を立てたという動機に特段の酌むべき事情はない。被告人は,シカを殺そうと考え,シカの前頭骨を貫通させるほどの力を込めて斧様のものをシカの頭部に振り下ろして殺害したものであり,動物の生命を軽視した残忍で悪質な犯行態様である。天然記念物の滅失という結果も重大である。
2道路交通法違反の事案についてみると,コンビニに買い物に行こうと思ったという動機に酌むべき余地はない。被告人は,飲酒終了後比較的短時間しか経過しておらず,体内にアルコールが残っていると認識していたにもかかわらず,自動車の運転をし,実際に自損事故を起こしており,場合によっては重大な人身事故につながりかねない危険な運転態様である。本件犯行には常習性が認められる。
3銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案についてみると,頑丈で本格的な日本刀を所持してみたいという安易な動機に酌むべき余地はない。被告人が所持していた刀は刃渡り約45センチメートルに及び,十分な殺傷力を有する危険なものである。これら一連の事情を併せ考えると,被告人の刑事責任を軽視することはできない。一方で,被告人が反省の言葉を口にしていること,被告人の雇用主が出廷し,今後の更生を援助する旨述べていること,被告人の母が今後の更生を援助する旨述べていること,被告人が自動車を処分したこと,被告人には懲役刑又は禁錮刑に処せられた前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情もある。そこで,被告人を(以下略)

(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/376/090376_hanrei.pdf (裁判所ウェブサイトの掲載ページ)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=90376